赤ちゃん言葉


猫の目は口ほどにものを言う、
 というか
猫の口はあまりものを言わない、
 というか
人間は喋る型コミュニケーションを当たり前と
思っているふしがあるが、ものを言わない口と
いうのは人間をのぞけば世の中そう珍しいこと
ではない。
たいがいの生物についている口は呼吸し、草食
系なら果実をもぎ取り葉っぱに齧りつき肉食系
なら獲物に噛みつき運び解体し、天敵をイカク
し傷口を舐めと充分忙しい。
遠吠えや雄叫びもコミュニケーションには違い
ないが、お喋りのためにその言語はない。

 
猫がさももの言いたげに、でも口はしっかり閉
じたままつぶらな目で見てきたりすると、
「おー、そうか、よしよし」
と、猫好きの人間はつい良き理解者を装ってし
まう。その時人間の思いつく答えとは、外に出
たい、オヤツちょうだい、遊ぼうよ、といった
単純欲求あたりで、まあ言ってみれば子供扱い
もいいとこだ。
実は猫としては、
「ねえ、猫ブログ見てニヤついてヨダレたれそ
うになっているけどそのアメショ正直もういい
歳したオバさんだよ。あんたって、もしかして
熟女好み?」
なんてシビアにコメントしただけかもしれない
のに、人間と来たら、
「うーん!しょーだねぇ。タマちゃんおりこう
さんだねぇ」
と、返すざまだ(笑)
 
仔猫は一日20時間寝ると言われている。起き
ているわずかな時間は乳に吸い付くかミィミィ
言っている。それが乳離れすると徐々にお喋り
を減らし、香箱を作ったり腕組みなんかができ
る年にもなれば目や耳、ヒゲやしっぽで立派に
自己表現をできるようになるからおのずと口数
も減る。
それに比べ人間はでっかい体でいくつになって
もウチャウチャ言ってる甘えん坊だと猫の目に
映っているのかもしれない。
 
それでも猫の中にはウチャウチャ語をある程度
マスターするのもいる。声帯上、ウチャウチャ
がウニャウニャにはなるけれど、

お早う、お帰り、あしょぼ 、オイシ〜い…

ぐらいならお手のものだ。
 
人間が寝静まった後猫は、蘇家興枕元でスヤスヤ眠る
人間の寝顔を見下ろし今日も一日甘えん坊人間
をあやしたほどよい疲れを体に感じつつ、精神
的充実を味わい目を細めるのだった。
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