れても返事のし

からあきらめていたにもかかわらず、胸の内で静かな激情の炎を燃やし続けてきた。心の奥底では一縷の望みを持っていたのかもしれない。
 しかし、それも断たれた。
 だからといって、簡単に気持ちを切り替えられるほど器用ではない。これからもこの想いを燻らせていくのだろう。仲睦まじい二人を誰よりも近くで見守りながら。

 国立有栖川学園中等部の入学式を終えて教室に戻ると、多くの生徒たちがわいわいおしゃべりを始める中で、悠人はひっそりと自席につく。そのとき、ひとつ前の席に見知らぬ男子が座って声をかけてきた。色白の中性的な顔に人なつこい笑美白針みを浮かべている。入学式の前には別の男子が座っていたので彼の席ではないはずだ。わざわざ悠人に話しかけるためにここに座ったのだろうか。いぶかしく思いながら眉をひそめる。
「そうだけど……」
「僕は橘大地(たちばなだいち)。名前、似てるだろう? クラス名簿を見て気になってたんだ」
 似ているといえるかどうかは微妙なところだが、そう言いたい気持ちはなんとなくわかった。だが、こんなことを嬉しそうに言ってこらようがない。口をつぐんだままじとりと冷ややかな視線を送っていたが、彼はまるで意に介することなくニコッとして言葉を継ぐ。
「君のことは悠人って呼ぶよ。僕のことは大地って呼んで」
「…………」
 初対面の同級生にこれほど馴れ馴れしくされた救世軍卜維廉中學経験はなく、戸惑いを隠せない。たいていのひとは不機嫌そうにしていれば離れていくし、必要最低限のことしか話しかけてこなくなる。今までそうやって他人
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